[最終更新日:2026-09-11]

企業の子育て支援というと、
育児休業、時短勤務、在宅勤務、復職支援などの制度を
思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
もちろん、こうした制度は仕事と育児の両立を支えるうえで欠かせません。
一方で、制度を整えてもなお、子育て中の従業員が抱えやすい課題があります。
その一つが「睡眠」です!
寝かしつけ、夜泣き、夜間覚醒、早朝起床などによって親の睡眠が崩れると、
翌日の疲労感や眠気、集中しづらさにつながります。
つまり、子育て世代の睡眠不足は家庭の中だけの問題ではなく、
従業員のコンディションや仕事と育児の両立にも関係するテーマです。
Lifreeでは今回、子育て中の従業員を対象に、2週間の睡眠改善プログラムを実施しました。
参加者14名の前後比較では、
不眠症状(AIS)、日中の眠気(ESS)、抑うつ関連指標(QIDS)の
すべてで改善方向への変化が確認されました。
また、子どもの睡眠や、育児・睡眠に対する心理的な負担にも変化が見られています。
本記事では、企業の子育て支援にはどのような取り組みがあるのかを整理したうえで、
「睡眠支援」という新しい子育て支援の取り組み例を、実際の導入事例とともにご紹介します。
企業の子育て支援の取り組みには何がある?
企業の子育て支援は、大きく分けると
「時間」「働き方」「経済的支援」「復職・キャリア」「健康・生活」の支援があります。
代表的な取り組みとしては、育児休業、短時間勤務、フレックスタイム、
在宅勤務、看護休暇、保育料補助、企業内保育所、復職面談、育児中社員向けの相談窓口などがあります。
これらはいずれも重要な施策です。
ただ、Lifreeが企業の健康支援に関わる中で感じているのは、
制度があっても、その従業員自身が疲れ切っていたら十分に活用できないことがあるということです。
例えば時短勤務によって退勤時間が早くなっても、帰宅してから寝かしつけや家事が続き
子どもが夜中に何度も起きれば、本人の睡眠時間は削られます。
翌朝は睡眠不足のまま出勤し、仕事中は眠気や疲労と戦う。
こうした状態が毎日のように続いているケースもあります。
そのため企業の子育て支援を考える際には、制度だけではなく、
「その制度を使いながら、本人が健康に働き続けられているか」まで考えることが重要です。
なぜ企業が子育て世代の「睡眠」まで支援するのか
睡眠は非常にプライベートなものなので、
「そこまで会社が支援する必要があるのか」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、子育て中の従業員の場合、本人が「早く寝よう」と思うだけでは解決できないことがあります。
子どもの寝かしつけが長引く、夜泣きで何度も起こされる、
子どもが早朝に目を覚ますなど、睡眠時間や睡眠環境を自分だけではコントロールしづらいからです。
今回のプログラムでも、子どもの睡眠だけを整えることを目的にはしていません。
子どもの睡眠、家庭の生活リズム、親本人のセルフケアを一体として考え、
働く親自身が回復できる状態をつくることを重視しました。
企業が子育て支援として睡眠に取り組む意味は、家庭生活へ介入することではありません。
睡眠不足による疲労や日中の眠気を軽減し、
仕事と育児を長く両立できるコンディションを支えることにあります。
【導入事例】子育て世代を対象に2週間の睡眠改善プログラムを実施
今回実施したのは、子育て中の従業員を対象とした2週間の睡眠改善プログラムです。
単に睡眠の基礎知識を学ぶだけではなく、それぞれの家庭環境に合わせて
「今の生活の中で実際にできること」を選択し、日常生活の中で実践してもらいました。
実施した内容は、寝室の温度や湿度、照明などの睡眠環境の見直し
入浴やストレッチ、朝の過ごし方、パワーナップなどのセルフケア、
子どもの就寝・起床リズムを整える方法、
家事やタスクを減らす方法論
チャット相談や個別アドバイスによる家庭ごとの調整などです。
ここでLifreeが大切にしたのは、「正しい知識を教えて終わり」にしないことです。
子育て中の従業員は、すでにやることが非常に多い状態です。
そこへ、
「運動しましょう」
「寝る前にストレッチしましょう」
「毎朝これをしてください」
と新しいタスクを次々に追加しても、かえって負担になる可能性があります。
そのため今回の支援では、「何を新しく頑張るか」だけではなく
何を減らせるか、どうすれば今の家庭生活の中で無理なく続けられるかを
一緒に考えることを重視しました。
結果① 不眠症状(AIS)は48%低下
参加者14名について、プログラム前後で不眠症状を評価するAISを比較しました。
平均値は、4.43 → 2.29
となり、48%低下しました。
さらに、プログラム前に「やや危険・危険」に該当していた10名のうち
7名が安全域へ移行しました。
企業の子育て支援というと、どうしても「働きやすさ」の制度に目が向きがちです。
しかし、本人の睡眠が十分に回復できていなければ
制度を利用して働き続けること自体が負担になることがあります。
その意味でも、子育て世代の睡眠状態を確認することには価値があります。
結果② 日中の眠気(ESS)は29%低下
日中の眠気を評価するESSは、
4.21 → 3.00
となり、29%低下しました。
企業側から見ると、この「日中の眠気」は重要な指標です。
睡眠不足の影響は、夜に眠れないことだけではありません。
翌日の仕事中に、
・集中しにくい
・頭がぼんやりする
・判断に時間がかかる
・疲れやすい
といった状態につながることがあります。
つまり、子育て世代の睡眠支援は、家庭でよく眠れるようにするためだけではなく
勤務時間中のコンディションを支える施策でもあると考えています。
結果③ 抑うつ関連指標(QIDS)は44%低下
抑うつ症状に関連するQIDSについても、
4.07 → 2.29となり、44%低下しました。
また、プログラム開始前に軽度に該当していた5名のうち、
4名が正常域へ移行しています。
もちろん、今回の結果だけから
「睡眠改善によってメンタル疾患を予防できた」と断定することはできません。
一方で、睡眠への不安や疲労を抱えている子育て世代に対して、
早い段階からセルフケアを届けることは
メンタル不調の予防を意識した支援の一つとして考えることができます。

子どもの睡眠だけでなく、親の不安や育児ストレスにも変化
今回のプログラムでは、従業員本人だけでなく
家庭での変化についてもアンケートを実施しました。
その結果、57%が「子どもの睡眠全体が改善した」、
71%が「子どもの睡眠への対応に自信が持てるようになった」、
71%が「睡眠への不安・育児ストレスが軽減した」、
64%が「自分自身の睡眠が良くなった」と回答しています。
企業施策として考えたときに重要なのは
「子どもがよく眠れるようになった」というところで終わらせないことです。
子どもの睡眠が整う
↓
親が夜間に起こされる回数や心理的負担が減る
↓
親自身の睡眠や疲労回復を支えられる
↓
翌日の仕事にも向かいやすくなる
というつながりがあります。
子どもの睡眠改善は、子育て支援のゴールであると同時に
従業員本人の回復を支える一つの手段とも捉えられるのです。
参加した従業員から寄せられた声
数字だけを見ると「睡眠が改善した」という結果になりますが
実際の生活の中で何が変わったのかを見ることも重要です。
参加者からは、例えば次のような声が寄せられました。
「『頑張る』ことより『いかに減らす』ことが大事という点が一番刺さりました。親自身が時間と気持ちにゆとりを持つことが必要だと思いました。」
「エアコンのモード変更するだけで、夜中に温度調節のため何度も目覚めることがなく、ぐっすり朝まで眠れました。」
「完璧な睡眠を目指すのではなく『○点睡眠で十分』と教えてもらうことで、眠れないことへの焦りが和らぎ、気持ちが楽になりました。」
「チャットで相談し、すぐに的確な返信をいただけたことで、すぐに改善の取り組みができました。」
「今回参加できなかった人にも聞いて欲しい!」
Lifreeでは、こうした「日常生活の中で実際に何が変わったか」を大切にしています。
健康施策は、知識をたくさん覚えることが目的ではありません。
その人が今の生活の中で実践でき、少しでも楽になったり、回復しやすくなったりすることが重要です。
企業の子育て支援は「制度を整える」だけで終わらせない
今回の事例から、企業の子育て支援を考えるうえで一つ大きな示唆がありました。
それは、制度とコンディション支援の両方が必要だということです。
育児休業、時短勤務、在宅勤務などは「働き続けられる仕組み」をつくります。
一方、睡眠や疲労への支援は、
その仕組みの中で、本人が健康に働き続けられる状態をつくるための施策です。
この二つは役割が違います。
制度だけ整っていても、本人が毎日睡眠不足で疲れ切っていれば、両立は苦しくなります。
反対に、本人のセルフケアだけを求めても、
働き方そのものに無理があれば改善には限界があります。
企業の子育て支援は、「制度を何個導入したか」ではなく、
子育て中の従業員が実際に何に困っているのかから考えることが重要だとLifreeでは考えています。
Lifreeが子育て世代への睡眠支援で大切にしている3つのこと
企業が子育て世代の睡眠支援を行う際、
Lifreeでは特に3つのことを大切にしています。
従業員本人の困りごとから施策を考える
「健康経営で睡眠施策が評価されるから」「子育て支援制度を増やしたいから」という
企業側の都合だけで始めるのではなく、まず従業員が何に困っているかを確認します。
同じ「子育て中」でも課題は違います。
頑張ることを増やしすぎない
子育て中の従業員は、仕事と家庭ですでに十分頑張っています。
だからこそ、「健康になるためにさらに頑張ってください」という施策にはしたくありません。
今回も「何をするか」だけではなく、何をやめるか、何を減らすかという視点を取り入れました。
満足度だけでなく、実際の変化を測定する
企業研修では、終了後に「満足しましたか?」と聞いて終わるケースもあります。
しかし、満足度が高かったからといって健康状態が改善したとは限りません。
Lifreeでは、
参加 → 行動変容 → 健康状態 → 仕事への影響
という流れで評価することを重視しています。
今回も、アンケートだけでなくAIS、ESS、QIDSによる前後比較を実施しました。
健康施策は「やったかどうか」ではなく、
従業員にどのような変化が生まれたかまで確認して初めて、
次の施策改善につなげられると考えています。
こんな企業には「睡眠」を軸にした子育て支援も選択肢
特に睡眠支援と相性が良いのは、子育て世代の従業員が増えている企業、
育休復帰後の両立支援を強化したい企業、疲労や睡眠不足について従業員から声が上がっている企業、
子育て世代の離職やメンタル不調が気になっている企業、
健康経営と両立支援を別々ではなく一体的に進めたい企業です。
最初から大規模な制度を導入する必要はありません。
例えば、子育て中の従業員を対象にアンケートを取り、どんな睡眠・疲労の課題があるかを把握する。
その結果をもとに睡眠セミナーを実施し、希望者には短期間の改善プログラムを行う。
このように、把握 → 支援 → 効果測定の小さなサイクルから始める方法もあります。
Lifreeでも、企業の健康施策は「会社がやりたいこと」ではなく、
従業員のお困りごとを把握したうえで必要な支援を設計することを大切にしています。
まとめ|企業の子育て支援に「従業員の疲労回復」という視点を
企業の子育て支援には、
育児休業、時短勤務、テレワーク、復職支援など、さまざまな取り組みがあります。
そこにもう一つ加えて考えてほしいのが、
子育て中の従業員自身のコンディションをどう支えるかという視点です。
子育て世代では、本人だけに「早く寝ましょう」「睡眠時間を確保しましょう」と伝えても
子どもの生活リズムがあるため実行できないことがあります。
だからこそ、子どもの睡眠、家庭の生活リズム
親自身のセルフケアまで一体として支えることに意味があります。
今回の2週間の睡眠改善プログラムでは、
参加者14名において、不眠症状、日中の眠気、抑うつ関連指標がいずれも改善方向へ変化しました。
また、睡眠への不安・育児ストレスや、子どもの睡眠への対応についても変化が確認されています。
企業が子育て世代の睡眠を支援することは、家庭に介入することではありません。
従業員が回復し、仕事と育児を無理なく続けられる環境をつくること。
制度を整えるだけでは届かなかった従業員の困りごとに目を向けるという意味で
睡眠支援は企業の子育て支援、健康経営、両立支援をつなぐ一つの選択肢になると考えています。
