[最終更新日:2026-10-27]

ホテル業界では、早朝勤務や夜勤、勤務時間が日によって異なる交替勤務など、
生活リズムが変化しやすい働き方があります。
特に、新しくホテル業界で働き始めた従業員にとって、
「夜勤の日はいつ寝ればいいのかわからない」
「夜勤中の眠気がつらい」
「勤務が変わるたびに生活リズムが崩れる」
「夜勤明けの休日を寝て過ごしてしまう」
といった睡眠の悩みは、
仕事に慣れることと同時に直面する大きな課題の一つです。
今回Lifreeでは、
ホテル業界で働く新人・交替勤務者20名を対象に、
約1か月間の睡眠改善サポートを実施しました。
その結果、プログラム前後で、
日中の眠気 37.4%改善
不眠度 47.1%改善
抑うつ関連指標 43.1%改善
という変化が確認されました。
しかし、今回Lifreeがそれ以上に重要だと感じたのは数値だけではありません。
開始当初には「夜勤やW勤務を続けられるのか不安」「昼夜逆転して眠れない」と
話していた参加者が、
徐々に仮眠、光、カフェインなどを自分の勤務に合わせて使い分け、
「夜勤で眠くなったらどうしよう」という不安から、「こうすれば乗り切れる」という
自分なりの対処法を持てる状態へ変化していったことです。
今回は、ホテル業界における新人・交替勤務者への睡眠支援の導入事例をご紹介します。
ホテル業界の新人・交替勤務者が抱えていた睡眠の課題
ホテル業界では、お客様の生活を24時間支えるため、
一般的な日勤だけではなく、夜勤や勤務時間の異なるシフトが発生します。
特に新人の場合は、仕事内容を覚えることに加えて、
これまで経験したことのない勤務リズムそのものにも適応しなければなりません。
今回の参加者からも、プログラム中に、
「夜勤やW勤務など慣れない生活が続いて睡眠への不安があった」
「夜勤が多く、ほぼ昼夜逆転の生活。なかなか眠れずオールしてしまうことも」
といった声がありました。
ここで企業側が注意したいのは、
こうした問題を単純に「本人の生活習慣」と考えないことです。
交替勤務では勤務時間そのものが変わるため、
一般的な「毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる」という睡眠改善方法をそのまま実践することは困難です。
だからこそ、新人研修の段階から仕事のやり方だけでなく
「この働き方でどう自分のコンディションを整えるか」を教えることにも意味があります。
今回実施した睡眠改善プログラム
今回のプログラムでは、睡眠についての知識を伝えるだけではなく、
参加者一人ひとりが自分の生活や勤務パターンに合わせて、小さな行動を実践していきました。
例えば、勤務前・勤務中の仮眠、カフェインを摂る時間の調整、夜勤明けの光対策、
起床後にカーテンを開ける、パジャマへの着替え、入浴、ストレッチ、運動、呼吸法などです。
さらに、参加者同士で日々の取り組みを共有しながら、継続的に実践しました。
2026年7月1日〜9月14日の間には、
20名から331件の投稿、延べ999件の習慣実践が記録されています。
す、すごい数。笑
Lifreeが重視したのは、
「正しい睡眠を知っている状態」から、「自分で睡眠を整えられる状態」へ変えていくことです。
結果① 日中の眠気が37.4%改善
日中の眠気を評価するエプワース眠気尺度(ESS)の平均点は、
5.35点 → 3.35点
となり、37.4%改善しました。
また、開始時には20名のうち「安全」が10名、「やや危険」が8名、「危険」が2名でした。
終了時には、
安全:10名 → 14名
やや危険:8名 → 5名
危険:2名 → 1名
へ変化しています。
ホテル業界において、日中・勤務中の眠気は本人の健康問題だけではありません。
接客、判断、確認作業など、仕事のパフォーマンスにも関係します。
そのため企業の睡眠施策では、「よく眠れるようになったか」だけでなく、
勤務時間中の眠気がどう変化したかを見ることも重要です。
結果② 不眠度が47.1%改善
不眠症状を評価するアテネ不眠尺度(AIS)は、
5.95点 → 3.15点
となり、47.1%改善しました。
特に注目したいのが、判定区分の変化です。
開始時に「危険」に該当していた人は11名でしたが、終了時には3名まで減少。
一方、「安全」に該当する人は、
5名 → 12名
へ増加しました。
交替勤務者に対して「夜勤があるのだから睡眠が乱れるのは仕方ない」
と考えてしまうと、改善できる問題まで見過ごしてしまいます。
夜勤そのものをなくせなくても、夜勤がある中で睡眠をどう取るかは支援できます。
結果③ 抑うつ関連指標が43.1%改善
QIDS-Jによる抑うつ関連指標の平均点は、
5.45点 → 3.10点
となり、43.1%改善しました。
開始時に正常域だった人は10名でしたが、終了時には16名となっています。
もちろん、今回の結果から
「睡眠プログラムによってメンタル疾患を予防した」と断定することはできません。
しかし、新しい仕事を覚えることに加え、
慣れない夜勤・交替勤務への適応が求められる新人に対して、
早い段階から自分のコンディションを整える方法を伝えることは、
メンタル不調の予防を意識したセルフケア支援としても重要だと考えています。
数値以上に大きかった「夜勤への不安」の変化
今回、Lifreeが特に注目したのがここです。
開始当初には、
「夜勤を続けられるかな」
という不安を抱えている参加者がいました。
ところが、プログラム終了時には、
「夜勤に対して続けられるかなという不安があったけど、対策や技術を身につけられた」
「夜勤を始めたての時は、どうにもならない眠気だったけど、対策すると改善された」
「夜勤に対してすごく不安だったけど、その不安が解消されたのが良かった」
という声が聞かれました。
これは、新人・交替勤務者への支援を考える企業にとって、とても重要なポイントだと思います。
夜勤そのものをなくせないとしても、
「夜勤が怖い」
↓
「自分には対処する方法がある」
という状態に変えることはできます。
仮眠を「知っている」から「自分で使える」状態へ
特に変化が見られたのが仮眠です。
ある参加者からは、
「出勤前に仮眠をしてみた結果、夜勤中は全く眠くなく、いつもより集中することができました」
別の参加者からも、
「出勤前に仮眠ができたので、今までで一番コンディションが良い状態で仕事できました」
という声がありました。
さらに、W勤務の際に2回目の仮眠を取り入れたことで
「帰宅後フラフラにならなくなった」という声も確認されています。
「夜勤では仮眠が大切です」と知識を伝えるだけなら簡単です。
重要なのは、
自分はいつ仮眠すればいいのか。
何分くらい取ればいいのか。
次の勤務ではどう使えばいいのか。
まで本人が考えられるようになることです。
「意志」ではなく「習慣」に変わっていった
今回、もう一つ特徴的だったのが行動変容です。
プログラム開始直後は「やってみました」という投稿が中心でした。
ところが2〜3週目以降になると、
「日課になってきました」
「癖がついてきました」
という言葉が増えていきました。
実際、記録された行動では白湯52件、仮眠41件、ストレッチ37件など、小さな行動が繰り返されています。
さらに出張時にもいつものパジャマや置き時計を持っていくなど、環境が変わっても自分の睡眠習慣を再現する工夫も見られるようになりました。
Lifreeでは、健康施策の成果を「セミナーを受けた」「満足度が高かった」だけでは評価しません。
知識を得る
↓
やってみる
↓
自分に合う方法を見つける
↓
繰り返す
↓
習慣になる
ここまで進んで初めて、研修で学んだことが日常生活に残っていくと考えています。
新人研修に「睡眠」を入れる意味
新人研修というと、企業理念、接客、業務知識、コンプライアンスなど、仕事をするための教育が中心になります。
しかし、夜勤・交替勤務のある企業では、もう一つ伝えておきたいことがあります。
それが、
「この働き方の中で、自分の心身をどう整えるか」
です。
今回の参加者からも、
「難しいことが多いかな?と思っていたけど、本当に簡単で続けやすいことが多かった」
「元々3日坊主だったけど、生活が整って、食事もしっかり食べ、部屋も綺麗に保てているので睡眠以外にも波及した」
という声がありました。
Lifreeが今回の支援を通して改めて感じたのは、新人に必要なのは「健康に気をつけましょう」という抽象的なメッセージではなく、困ったときに自分で使える具体的な技術を渡すことです。
これは睡眠教育というより、長く働くための「セルフマネジメント教育」に近いと考えています。
ホテル業界だけではなく、交替勤務のある企業に共通する課題
今回の事例はホテル業界ですが、同じ考え方は夜勤・交替勤務がある多くの職場に応用できます。
製造、物流・運輸、医療・介護、警備などでも、会社側が夜勤そのものをなくすことは難しいでしょう。
だからこそ、
「夜勤をなくす」か「本人に頑張ってもらう」かの二択にしないこと
が重要です。
勤務設計や仮眠環境など会社側が改善できることに取り組む。
同時に従業員には、勤務前の仮眠、夜勤中の眠気対策、光、カフェイン、夜勤明けの過ごし方など、自分でコンディションを調整する方法を伝える。
企業側の環境整備と、従業員側のセルフマネジメント支援を両輪で進めることが、交替勤務者の健康支援には必要です。
企業の睡眠施策は「参加率」だけで評価しない
今回の取り組みでは、AIS、ESS、QIDSによるプログラム前後の状態だけでなく、日々どのような行動を実践したか、その結果本人が何を感じたかまで確認しました。
Lifreeでは、企業の健康施策を、
参加 → 行動変容 → 健康状態 → 仕事への影響
という流れで評価していくことを大切にしています。
例えば夜勤・交替勤務者向けの施策なら、研修参加率だけでなく、仮眠などの実践率、日中の眠気、不眠度、睡眠休養感、疲労、さらに企業の課題に応じてヒヤリハットや欠勤などを確認する方法があります。
「睡眠研修を実施した」で終わらせず、その後、従業員が自分でコンディションを整えられるようになったのかまで見ることが重要です。
まとめ|交替勤務に慣れることを「本人任せ」にしない
夜勤や交替勤務がある企業では、
新人が仕事を覚えるだけでなく、これまでとは違う生活リズムにも同時に適応しなければなりません。
今回、ホテル業界の新人・交替勤務者20名を対象に睡眠改善サポートを行った結果、
日中の眠気は37.4%、
不眠度は47.1%、
抑うつ関連指標は43.1%改善方向に変化しました。
そしてLifreeがそれ以上に大切だと感じたのが、
「夜勤が不安」から「自分には対策できる方法がある」へ変わったことです。
夜勤をなくすことができなくても、
夜勤に対応する力を身につけてもらうことはできます。
特に新人の段階から、
「夜勤前はどう眠るのか」
「勤務中に眠くなったらどうするのか」
「勤務が変わるときはどう調整するのか」
を知っていれば、初めて交替勤務に直面したときの不安も変わります。
企業が仕事のやり方を教えるのと同じように、
その仕事を健康に続けるための方法まで教える。
新人の定着、健康支援、安全、パフォーマンスを考えるうえで、
睡眠教育は交替勤務のある企業だからこそ検討したい施策の一つです。
