4月や10月の新入社員シーズン。
新しい職場、新しい人間関係、慣れない業務。
希望に満ちたはずのスタートが、
わずか数週間で「不調」「不安」「眠れない」に変わることは少なくありません。
現場で多くの社員を見てきた中で、私が強く感じるのは、
“メンタルケアの第一歩は睡眠ケアである”ということ。
カウンセリングや面談よりも前に、まず「眠れる体と脳」を取り戻すことが、
立ち直りの最短ルートになるのです。
厚生労働省の調査によると、入社3年以内の離職理由の上位には「メンタル不調」が常に含まれています。
特にコロナ禍以降、「対面コミュニケーションへの不慣れ」や「在宅勤務による孤独感」が加わり、
環境変化にうまく適応できない若手社員が増えています。
実際、企業研修や健康面談の現場では、次のような声がよく聞かれます。
「眠れない日が増えて朝がつらい」
「集中できない」
「ちょっとしたことで涙が出る」
こうした訴えの多くは、ストレスや性格ではなく、
“睡眠の乱れ”が引き金になっているケースが非常に多いのです。
睡眠は、脳と心のリセットタイム。
夜の眠りの中で、脳は「記憶の整理」と「感情の処理」を行っています。
特にレム睡眠中には、日中に受けたストレスや不安な出来事を整理し、
感情のバランスを取り戻す働きがあります。
しかし、睡眠不足が続くと――
感情をコントロールする「前頭前野」の働きが鈍くなる
不安や恐怖を司る「扁桃体」が過敏になる
判断力や集中力が低下し、さらに自己否定感が強まる
この状態が続けば、どんなに前向きな人でもメンタルが不安定になります。
つまり、睡眠不足そのものが“メンタル不調の温床”なのです。
新入社員は特に、以下の3つの要因で睡眠が乱れやすい傾向にあります。
初めての上司・業務・評価。常に「見られている」感覚が続くことで、夜になっても脳が休まらない。
結果、寝つきが悪くなり、眠りが浅くなる。
大学生活の自由なリズムのまま社会人になり、就寝前のスマホ閲覧が習慣化。
ブルーライトと情報刺激が脳を覚醒させ、メラトニン分泌を抑制してしまう。
一人暮らし、通勤、勤務時間などの変化で、生活リズムが大きくシフト。
「朝が起きられない」「週末に寝だめをする」が悪循環を作る。
これらが重なると、身体的な疲労よりも「精神的な疲れ」のほうが先に限界を迎えます。
睡眠の乱れを放置することで、メンタルダウンの予備軍が静かに増えていくのです。
メンタルケアというと「相談」「声かけ」「面談」を思い浮かべがちですが、
本当に必要なのは“眠れる仕組み”を整えること。
睡眠の質を上げるだけで、社員のメンタルは驚くほど安定します。
オリエンテーションの中で「睡眠の仕組み」や「脳の休息メカニズム」を知ることは、
新入社員にとって最もシンプルで効果的なセルフケア教育です。
「眠れない=悪いこと」ではなく、「それは自然な脳の反応」と理解するだけで、不安は軽減します。
1分で回答できる簡易チェックを週1回実施することで、
“本人が気づかない不調”を早期に発見できます。
また、可視化することで上司やメンターも気づきやすくなります。
「遅くまで頑張る」より「翌朝に回す」文化を根付かせることが、
若手社員のパフォーマンスとメンタル安定の両立につながります。
勤務間インターバル制度の活用も有効です。
集合研修やOJTで詰め込み過ぎず、“脳を休める時間”を設ける。
学習効率は「勉強時間」ではなく、「休息の質」で決まります。
人事・マネジメントの立場から見ると、
「眠る」という行為は単なる休息ではなく、感情を安定させる再生プロセスです。
眠れていない社員にカウンセリングだけを行っても、脳が整理されていないため、
話してもスッキリせず、根本的な回復には至りません。
逆に、睡眠が整うと――
感情の起伏が減り、前向きな判断ができる
学習の吸収力が上がり、OJTの効果が出やすくなる
「もう少し頑張ってみよう」という自発的な回復力が戻る
つまり、「眠れる社員」は、折れない社員になるのです。
新入社員のメンタル不調は、本人の弱さではありません。
急激な環境変化と、眠れない体制のまま働き続ける仕組みの問題です。
眠りを整えることは、心を守ること。
睡眠は、最も身近で、最も効果的なメンタルケアです。
企業が「睡眠」を“健康経営”の一環として取り入れることは、
メンタル不調の予防だけでなく、社員の定着と成長の土台づくりでもあります。
新入社員が安心して眠れる職場は、必ず成長できる職場。
それが、これからの人的資本経営の原点です。
「仕事が忙しくて睡眠時間を確保できない」「寝ても疲れが取れない」という方は、
睡眠の専門家に相談することで解決策を見つけることができます。
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