【セミナー開催記事】ハーバードに学ぶ日本企業に最適なウェルビーイング経営の進め方

みなさん、こんにちは!

近年、企業経営を進める上で重要な概念となりつつある「ウェルビーイング」や「ソーシャルキャピタル」、人々の健康と関わりがあるのはなんとなく分かりますが、

いまだに漠然としたところがあって、働く現場に落とし込むのが難しかったりします。

 

そこで今日は、Lifreeのメンバーの一人で、ハーバード大学院にてパブリックヘルスの研究をされていた佐藤昌代さんの考え方をもとに、

ウェルビーイングやソーシャルキャピタルについて考えていきます。

専門の研究者は健康経営をどのように捉えているのか、すごくおもしろいお話をしていただいたので、ぜひこちらで共有させていただきたいと思います。

(この記事は、昌代さんのセミナーを文字にさせていただいたものです。)

 

パブリックヘルス(疫学)

そもそもパブリックヘルスという研究領域自体が日本ではあまり馴染みがないものですが、

コロナ禍でしばしば脚光を浴び、その重要性や有用性が再認識されたような気がします。

それは非常に実用的な学問であり、端的に説明するとすれば

・社会的な健康問題に対してなんらかの仮説を立てる

・人、場所、時間に注意を払い仮説の検証、分析を行う

・健康問題に対するなんらかの解決策を社会に提案する

という一連のプロセスを繰り返すことで進められていく研究です。

 

例えば、アメリカの肥満の事例が分かりやすいかもしれません。

肥満の問題は、個人の健康意識や自己管理能力と結びつけて語られることも多いですが、アメリカでは地域ごとに明らかに肥満率に違いがあります。

当然、肥満という健康問題に対して、食事などの健康教育は行われていますが、問題の根は地域的かつ集団的な何かにも伸びていると言えるのです。

それは極端にいえば、自分が住んでいる地域にジャンクフード店が多いのか、オーガニック食品を扱うお店が多いのか、といった個人を超えた議論につながってきます。

 

昌代さんは、このような健康問題に「集団」という視点から取り組んできました。この考え方がパブリックヘルスです。

 

“病気の改善を個人の努力だけに追い求めてしまう社会は、格差をより大きくしてしまう。”

“パブリックヘルスを通じた健康づくりは、個人一人ひとりの力に加えて、集団の力がとても重要である”

(Dr. イチロー カワチ)






ウェルビーイング

ここで、パブリックヘルスの領域からも積極的な議論が巻き起こっているのが「ウェルビーイング」と「ソーシャルキャピタル」です。

はじめに前者の一般的な定義を確認してみましょう。

 

健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも全てが満たされた状態(well-being)であること。(WHO)

 

ここで昌代さんが強調しているポイントが、「社会的にも」という部分と「心身の状態を扱った概念である」ということです。

つまり心身の健康には、他者とのつながりを包括した「社会的な」視点が重要であるのです。

また、その他にもウェルビーイングの定義・説明は様々あります(PERMAモデル、SPIREモデル、ギャロップ社のものなど)。

そこでも一貫した柱となりうるのが、身体的、精神的、社会的という3つの要素であり、これらの視点はやはりとても重要なようです。

 

(ちなみに、ウェルビーイングに近い日本国内のGDW(国内総充実)の県別結果も紹介していただきましたが、そのランキングも非常に興味深かったので、気になる方はぜひこちらもチェックしてみてください!)

 

しかし、この概念は「経営戦略」ではなく「概念」であるため、そのままではやや扱いにくいものでもあります。

「社会的」「コミュニティ」という要素をベースに、社内環境の整備や、社風の醸成などの具体的施策に関しては、

それぞれの企業が少しずつ段階的に実現させていかねばなりません。

 

 

ソーシャルキャピタル

次に、ソーシャルキャピタルの考え方ですが、こちらはもう少し効率や生産に軸が置かれた概念であるようです。

 

人々の協調行動を活発にすることによって、社会の効率性を高めることのできる「信頼」「規範」「ネットワーク」といった社会組織の特徴(厚生労働省)

 

その定義はその他にも様々言われていますが、昌代さんの整理するところによれば、

「人とのつながりによって得られるもの(社会関係資本)」という単純な語彙で表現できます。

 




さらにこれをより分かりやすく説明する上で、ワールドカップ敗戦後もゴミ掃除をする日本人サポーターの例を考えてみましょう。

 

度々ニュースでも話題になるそれですが、まさよさんはこれをホルモンから分析し、

そこで生まれている幸福度に関する心の動きを以下のようにまとめています。

 

・心身の健康(セロトニン的幸福)

・つながり/愛(オキシトシン的幸福)

・成功/報酬(ドーパミン的幸福)

・フロー/高揚感(エンドルフィン的幸福)

 

これらの協調活動に関する情動、規範、ネットワークは、

自分→応援チーム→スタジアム・地域→社会(日本)→未来(子孫)→地球(環境)という様々なステークホルダーへの価値提供を、自発的に提供できるという循環を生み出しています。

こうした、連帯による充実感、幸福感を伴った風土こそがソーシャルキャピタルであり、その状態をウェルビーイングと言うことができるかもしれません。




企業に何ができるのか?健康経営

では最後に、健康経営でそれをどのように実現していくことができるのか。

ずばり、そのキーワードは「The power of work friends」です。

 

社会の全体的なウェルビーイングの始まりはまず個人からで、

個人の主観的ウェルビーイングが充実していれば、企業や社会に対する良い循環も大きくなります。

また、職場での人間関係は、仕事でのパフォーマンスにも大きく影響します。

つまり、ここで企業が考えるべきは、ひとつのコミュニティとしての職場で、

よりよい人間関係、よりよくつながれる環境をいかにうまく作り出すことができるかということです。

調和はするが、主体性は保つ、そうした和の心に通じる雰囲気を社内でどのように作り出せるのか、健康経営の第一歩はその思索に潜んでいるかもしれませんね。

 

いかがだったでしょうか。

昌代さんのお話は研究者からの視点ということで、

語彙の定義や理念がしっかりしており、具体事例への理解がとても鮮明で分かりやすかったです。

このお話が、みなさまの自社での具体的施策を考える参考になれば幸いです。

健康経営について興味を持っていただけた方、疑問点や相談などある場合、お気軽にお問い合わせください!

 

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